「ゆっくりでいいんだ」

彼はそう言って私の顔を覗き込む


「だめ!!だめなの!!」

「どうして?」


なぜか全てを知っていて、それで

私に言葉をそっと置いていくような


そんな空気が通っていくのを感じた




「今すぐ、書きたい。書きたいストーリー
がいくつも、いくつもあって、だから!!」



「だから焦って書いてどうしたい?」




ひどく優しい声だった。


その1文だけふわふわの
クッションの上に投げたみたいな。





柔らかい音だった。