「風邪ですね。薬を出しておきます」

医師は安心させるように微笑み、言う。女性は「よかった……」と呟き、胸を撫で下ろす。

「ブルネッタ先生、ありがとうございます。あなたは本当に優秀な医師です」

女性は微笑み、医師の手を握る。医師は照れながら「この村で医師は私だけですから、そう思うんですよ。街に行けば私より優秀な医師はたくさんいますよ」と言った。

医師の名は、ジュエル・ブルネッタ。他国で医術を学び、十九歳という若さではあるがこの村で医師として診療所で働いている。この村でたった一人の医師は、村人から慕われている。

「レン、風邪薬をお渡しして」

ジュエルがそう言うと、患者の男の子より小さな男の子が薬の入った袋を手にする。

「はい、どうぞ!!お大事に!!」

元気な声と笑顔でそう言い、黒髪に黒目の男の子が薬を渡す。女性が「ありがとう」と薬を受け取った。

レンとジュエルは見た目は全く似ていない。しかし、レンはジュエルの息子だ。村人たちもそのように接している。