目の前にある扉は閉まったまま。
いつもいつも……お昼休みのときだけしか、この扉を開けることはない。
そう…わたしが来たのはいつも世唯くんとお昼休みに会っている部屋。
きっと、放課後の今は空いていない。
だって前に世唯くんが言ってたから。
授業をサボるときと、お昼休みのときはこの部屋を使うけど、放課後は滅多に使わないって。
世唯くんがいるはずないのに、気づいたら足を運んでいた。
ここ1週間、まともに顔を見ていないせいで無性に会いたい気持ちが込み上げてくる。
ただ、こんな気持ちになってるのはわたしだけ。
開くはずのない扉に手をかけた。
そして
スライドするはずのない扉が、ガラガラっと音を立てて開いた。
え……。
どうして開いたんだろう。
世唯くんがもしかして鍵をかけ忘れた…とか?
あわてて中に目を向けると……。
「……あー、いとだ」
大好きで会いたかった人の声が、空気を揺らした。

