そんな余裕がなさそうな声が聞こえてきて数秒後……チュッと軽く頬にキスをされた。
「っ……!」
「……ほんと、お前の可愛さやばいよ」
藍野くんのまさかの行動にびっくりして、手首をつかむ力が少し緩んだのをいいことに、目の前の身体を押し返した。
そして教室を飛び出した。
追ってくるかと思って、ひたすら廊下を走って階段を登る。
「な、なにあれ……っ」
乱れた呼吸で、さっき藍野くんにされたことを思い出すと頭がいっぱいになる。
すごい音を立てる心臓。
……ちがう、これは藍野くんにたいしてのじゃない。ぜったい、走ってたから、そのせいだ……。
気づいたら最上階の一個下の階まで階段を上っていた。
にしても……教室を飛び出してきたのはいいものの、こんな格好で出てしまったのは不覚だった。
着替えの制服は教室だし…。
今から戻ればまだ藍野くんいたら顔合わせたくないし。
そしてわたしが向かった先は……。

