ここで藍野くんとの会話は切れたので、答えたくない質問にも答えずにすんだ。
にしても……藍野くんってばなんでいきなりいろいろ聞いてきたんだろう?
いつもは軽く話すくらいで、そんな話を広げてくることも質問攻めにされることもないのに。
……なんて、藍野くんのことで頭がいっぱいになっていると。
「……いーと」
今度は左隣から聞こえる……好きな人の声。
さっきまでうとうとしていたのに、今はぱっちり目を開けていて気だるげにこちらを見ていた。
「な、なに?
もう授業始まってるよ?」
もうすでに先生が教卓に立って授業を始めているので、小声で話す。
「教科書……」
「ん?」
「忘れたから一緒に見せて」
何を言うのかと思えば予想外なこと。
世唯くんが授業を聞こうとして、教科書を忘れたからわたしに頼んでまで見ようとしている。
いつも授業中はほとんど教科書を机の上に置いてないし。
おまけに寝てるのに。
今日に限ってどういう風の吹き回し?

