「まあね。
今回はめっちゃクジ運よかった」
「そうだよね、後ろの席だもんね」
何気なく藍野くんの顔を見ながら話していたら、急に顔をそらして頭をくしゃくしゃかいていた。
何か言いたいことあるのかな?
「いや……後ろの席でとかより
花町の隣になれたほうが━━━━」
何やらいつもハキハキ喋る藍野くんが言葉を詰まらせて言いにくそうにしていたとき。
「……あー、いとだ」
さっきまで藍野くんに向いていた意識は、今の声を聞いてすべてそちらに向けられた。
声の主のほうに身体を向けると、相変わらずつまらなさそうな顔と瞳をしている……世唯くんがいた。
教室で"いと"って呼ぶなんて珍しい……って、そうじゃない!
わたしが座る左隣に世唯くんがきたってことは……も、もしかして隣の席なの?
「世唯く……じゃなかった、千景くんそこなの?」
なんでか教室では千景くんって呼んだほうがいいと思って言い直したんだけれど。

