「……んじゃ、なんて呼べばいいの?」

「さっき呼んでくれてたのに」


「さっき?覚えてないなあ、なんて呼んだっけ?」

「ぅ……ひどい、さっき糸羽って呼んでくれてたのに」


とぼけるフリしたってダメだよ。
ちゃんと聞いてたんだから。

すると、イジワルそうに笑った世唯くんが


「……嘘だよ、
ちゃんと覚えてるよ……糸羽」


甘く甘く……名前を呼んだ。


そしていきなり顔を近づけてきたので、思わずギュッと目を閉じると……。


「……ほんと無防備。
そんな簡単に目閉じちゃダメでしょ?」


その声に反応して目を開けると、世唯間の顔がほぼ目の前にあった。


もうこれはキスしているときの距離と変わらないくらい。

ただ唇が触れていないだけ。


「キスできそうなくらい……近いね」

世唯くんから近づいてきて、そう仕向けたくせにイジワルく笑いながら動きを止めたまま。