あなどれないね、世唯くん。




そういえば、わたし今日どこで寝ればいいんだろう?

ここの大きなベッドはおそらく世唯くんが使うだろうから、わたしはリビングのソファかな。


あそこなら、わたし1人が寝るくらいの広さは充分にある。


寝てる……みたいだから、起こさないほうがいいかな。

そのまま、ベッドのそばから離れようとしたとき。



「……どこいくの、いと」


不意に片腕をつかまれて、身体が世唯くんが横になるベッドに引き込まれた。

いとも簡単に、わたしを正面からしっかり抱きしめてくる。


「お、起きてた……の?」

「……いとのこと待ってた」

こんなふうに、優しく抱きしめないで、
甘い言葉をかけないで。

誤解するから、勘違いするから。


世唯くんの気持ちが少しでもわたしに傾いてるんじゃないかって。

そんな淡い期待を抱かせないでほしい。
どうせ、そんな期待はすべて泡のように消えてしまうのだから。