あぁ、もう最悪……っ。

完全に捕まったと思った。
声をあげようにも、怖くて声なんか出るわけない。


そのままグッと抱き寄せられて。

なぜか不思議とその体温を感じると一瞬で怖さが飛んでいった。


そして━━━━。



「……いと」


この声が耳元で聞こえたと同時に、
安心してそのまま意識を手放した。


***


次にわたしが目を覚ましたときには見覚えのない天井が真っ先に視界に入ってきた。

そしていまわたしの身体はベッドの上で寝かされていることがわかる。


ここは……?

頭を少し横にずらすと、何もない広い部屋。
だけど、どこか見覚えのある景色。


ゆっくり身体を起こしたとき、ちょうど部屋の扉が開いた。


「……目覚めた?」

「っ、……せ…いくん」


そこにいたのは、紛れもなく世唯くんで。

そうだ…ここはおそらく世唯くんの部屋。
前に世唯くんが風邪をひいて看病しに来たことがあるからなんとなく覚えていた。