あなどれないね、世唯くん。




「……早くしてくれないと俺からするよ?」

身体を少し前に出して、グッと顔を近づけてくる。


ほんの少し前まで、藍野くんにドキドキしていた自分はもういなくなっていた。

あれは少し騒がしくなるくらいだったのに。

今は少しどころか、バクバクと心臓の音が騒がしくて自分の耳元に響いて聞こえるくらい。


……こんなにも違うんだ。

さっき少しでも藍野くんと2人でいて、ドキッとした自分がいた。

だけどいま世唯くんを目の前にしたら、そんなの比べられないくらい……世唯くんでいっぱい。


「何も言わないならしちゃうよ」

繋がれた手をグイッと引かれて、身体が世唯くんのほうへ倒れかける。

唇が触れるまで、あと数センチ。


「俺からしてもいいけど……」

もう意識をすべて奪われそうで

きっと唇が触れてしまえば、止められない。



「キスで止まんなくても知らないよ」