あー、忘れ物ですか。

「忘れ物を取りに会社に行ったら花沢さんがまだいたので」

そう言った西口くんに、
「もう終わったから帰るところよ」

私は答えると、パソコンの電源を切った。

「本当に違いますね」

「えっ?」

何を言われたのか、全くと言っていいほどに理解ができなかった。

「会社の顔と裏の顔」

…返事をしなければよかったと、心の底から後悔した。

「…幻滅した、でしょ?」

そう言った私に、
「してません」

西口くんはコンビニの袋を見せてきた。

「それは…?」

私がコンビニの袋を指差したら、
「差し入れです、夕飯は食べていないんですよね?」

西口くんは答えた。

さすが西口くんだと、私は思った。

抜かりがないと言うのは、まさにこう言うことだ。