「え、なんで・・・」

平良の姿に驚いて、そう口から溢れる。

「沙和ん家行ったら、おばさんが塾のみんなと花火大会行ったって・・・」

平良が息を切らして説明する。
ハッとする。

平良はいつものように店に来たんだ。

少し胸が痛む。
やましい気持ちはないはずなのに、なんなんだろう。

「俺だろ。」

平良が呟いた。

「えっ?」
「なんで塾の奴らなんだよ、俺だろ。」

見たことのない平良の顔に思わず目をそらす。

「でも、平良・・・」
「俺には・・・」

平良が私の言葉を遮った。

「沙和しかいねえよ、花火を一緒に観たい人なんて。」

平良の言葉にドキッとした。

私もそうだ。
私もそうだったはずなのに。

「でも、平良、今日練習試合だって・・・」
「バカか。夜まで練習試合でかからねえよ。」
「うん・・・。」

つい俯いてしまう。

「好きな人との花火大会だったら、何が何でも来るに決まってんだろ。」

え?

「沙和と来れるなら、何が何でも間に合わせるよ。」

顔を上げる。
まっすぐに私を見てくる平良の顔。

嘘でしょ?

「好きな人って私・・・?」
「決まってんだろ。バカか、お前は。」

平良が呆れたように言う。

「好きだよ。ずっと前から。なんで気付かねえんだよ。」

周りの雑音が全く聞こえなくなる。

ずっとずっと好きだった人。
私がずっと好きだった人が、今、私に好きって言ってくれた。

「今日の花火は、俺と見て欲しい。」

平良が私に手を差し伸べる。
私はゆっくり手を重ねる。

「うん。」

私の返事を聞くと、平良が私の手を引いて歩き出した。

夢みたい。

巾着の中でスマホのバイブが鳴った。

「ごめん、ちょっと。」

平良を止めてスマホを取り出す。
矢野さんからだ。

「良かったね☆
私たちは3人で見るよー♪

デート楽しんで!」

「矢野さん・・・。」
「ん?なんて?」
「ううん、なんでもない。」

私は笑顔で返す。
また手を繋いで人混みの中歩き出した。