講義室に入ると、ど真ん中に真っ先に目に入る集団があった。

矢野さんと他校の男子生徒2人だ。

誰も近寄れない空間を作ってしまっていて、3人だけで和気藹々と話している。

さすが矢野さん。
声かけられちゃったんだ。

入り口でどうしようかと少し悩んでいた間に、矢野さんに見つかった。

「前山さん!」

こっちに手を振ってくる。
矢野さんの声に、隣にいた男子2人も私の方を見る。

顔面レベルは、高い。

この輪に入るくらいなら、私一人で受けるんだけど。

そう思いながらも、渋々輪に近づく。

「おはよ。」
「おはよう!」

私が言うと、誰だか分からない男子2人まで答えた。

誰。

「今日ね、後ろの席に座ってたから、つい話しかけちゃったの。東高の田尻くんと高野くん。」
「田尻です。」
「高野です。」

2人の爽やかな笑顔に少し圧倒される。
東高って県内トップの進学校じゃん。
こんな爽やかな生徒もいるなんて。

「前山です。」

私は自分でもビクビクしてるのが分かる。
私ってこんなに人見知りだったんだ。

「東高だから分からないとこ教えてもらえそうじゃない?」

矢野さんが私に言ってくる。

分からないところは講師に聞くよ。
私はこういう眩しい男子とは今まで縁がなかった。

「そうだね。」

愛想笑いで話を合わせる。

「でも俺ら東高でもバカな方だけどね。」

高野くんが言う。

「入学した時が一番頭良かったってやつ。」

田尻くんが続ける。

「とか言って絶対頭いいじゃーん。」

さすが矢野さんはノリがいい。
私が相変わらず愛想笑いで流してる間もちゃんと反応する。
こういうところだよなあ。

高野くんと田尻くんは「いやいや」と手を振りながらも嬉しそうにデレデレする。