今日は飲み会の団体客が2階の座敷に入ってるせいで、いつもより賑やかな店内。

私はいつも通りご飯を食べ終えて、何気ないフリをして平良を待つ。

平良が来たのは19時半を過ぎた頃。
いつも通りの「こんばんはー」という声が店に響く。

私はハッとする。

24日花火大会行かない?
24日花火大会行かない?
24日花火大会行かない?

呪文のように誘い文句を頭の中で繰り返す。

平良が席に座る。

「めっちゃ腹減ったー。」
「おつかれ。」
「昼から何も食ってねえよ。ごはんっ、ごはんっ、ごはんっ、ごはんっ!」
「子どもか。」

ケラッと平良が笑う。

ママが準備していたのか、すぐに定食がきた。
平良が本当に子どものように目を輝かせる。

「わー、いただきまーす!」
「ゆっくり食べなよ。」

私は平良が気持ちいいほどに食べていく姿を眺める。
毎日毎日当たり前のように見てきた姿。
実はこの姿が好きだったんだなあと気付く。

「あ、そうだ。」

突然平良が私を見る。

「夏休み中さ、全然遊べてないじゃん。どこか行く?」

きた。
なんてタイムリー。

「うん。」

突然のデートの誘いに、私は大きく首を縦に振った。

「沙和、いつ空いてる?」
「私は夏期講習とお盆以外そんなに予定ないから大丈夫。」
「じゃあ20日の土曜日とかどう?」
「20日?うん、大丈夫。」
「おー、やった。」

予想外の笑顔を見せる。
思わずドキッとする。

やったって喜んだ?今。

私も少し勇気を出してみる。

「平良さ、」
「うん。」
「ちなみに24日はどう?」

緊張の瞬間。
いい反応をお願いします。

平良は「24日、24日・・・」と呟きながらスマホで予定を確認する。

すぐに「あっ」と反応があった。

どっちだ?

「練習試合だー、ごめん。」

私は「あっ・・・」とだけ声が漏れて、固まってしまった。

「沙和?」

平良から声をかけられて、やっとハッとする。

「ああ、うん。」

私はやっと笑顔を見せることができた。

花火大会、ダメだ。
でも20日デートができる。

複雑な思いでいっぱいの夜だ。