それからずっとお昼も午後も一緒にいた。
私みたいな地味な人間とも、矢野さんは楽しそうに話してくれる。
私が言うことじゃないけど、平良が振るなんて、信じられないというか、もったいないというか・・・。

ちゃんと話してみればみるほど、かわいい子だ。
こりゃモテるよ。

平良は惜しいことをしたな。

「花火大会、平良くんと行くんでしょ?」

突然矢野さんはキラキラとした目で聞いてきた。

「花火大会?町の?」
「そうそう。」
「あー、どうなんだろ。毎年行ってなかったな。」

そういえばそんなものがあった。
でも今まで私はそんなに興味を持ってなかった気がする。

いっつもすっかり忘れてて、家でご飯食べてるとドン!ドン!と花火の音がして、それで気付く。
ああ、今日は花火大会だったんだ、って。

平良もそんな感じで、他のお客さんと一緒に店の外に出て、見えるとか見えないとかワイワイするのが定番だった。

お店を空けられないから、小さな頃から花火大会に行くことはなかった。

私の答えを聞いて「そっかあ。」と矢野さんは言う。

「平良くんも忙しそうだもんね。」
「ああ、今度から部活も新体制になって2年生メインになったから、ちょっと忙しくなったみたい。」
「夏休み中会えてるの?」
「あ、ほら、家隣だから一応毎日は・・・。」

なんとなく矢野さんが言う「会えてる」っていうのは、デートの意味のような気がした。

でも私と平良にとっては、あの店でご飯を食べるのがデートなんだ。

「じゃあ、会ったら花火大会の日の予定聞いておきなよ。」
「えっ。」
「今年は一緒に行けばいいじゃん。」

矢野さんが意味ありげに笑う。

「花火大会って何日?」
「24日だよ。」
「24日かあ。」
「夏休み終わる前のイベントじゃん!」

そっかあ。
なんか私から聞くの緊張するなあ。

私の不安をよそに、矢野さんはノリノリで背中を押してきた。