「べつに何ともないし。」

・・・

はあ?
なんだそれ。

私だけこんなドキドキして、胸がギュッとなって喉も通らなくて、何度も何度も思い出して・・・
私だけ・・・

「私だけかよ。」

つい怒り口調で出てしまった。

私だけこんなにドキドキしたりしてるんだ。
昨日のキスを一晩中思い出したりしてるんだ。

「何が?」
「こんなに・・・」

平良がジッと不思議そうな顔で私を見つめてくる。

こんなに・・・好きなのは、私だけかよ。

「あれ?貸したよな?」
「は?」
「タッチ。」
「そうやって話を変える!」
「いやいやいや、読んだよな、お前。」

何年前の話だ・・・。

「もしかして読んでない?」

そう、私はさんざん借りておいて読まないで返した。
中2の時。

「全然読んでない?1巻も2巻も?」

平良がグイグイ詰め寄ってくる。

「だから、何の話?」
「あーショック。読めよ。浅倉南の名言だぞ。」
「はあ?何が?」
「また貸すから、読め。今晩持ってくからな。読めよ。」

平良はそう言うと、「部活行く。」と言って保健室を出て行った。

なんなんだ、あいつ。
わっけわかんない・・・。