平良の顔が離れた。

「え?」

思わず声が出てしまった。

「え?」
「え?」
「いや、だって、今の流れならこうなるだろ。」
「うそ。平良、さっきまで泣いてたじゃん。」
「泣いてたからなんだよ。」
「私、慰めたかっただけで、べつに・・・」

私がパニックになって言うと、平良は「あっそ」と言って立ち上がった。

私も急いで立ち上がる。
平良の顔を見ることができない。

「帰る。」
「そっか。」
「じゃあ。」
「ご馳走様でしたって、おばさんに・・・」
「分かった。じゃ。」

私はほとんど走るように部屋を飛び出して階段を駆け下りた。

急いでサンダルを突っ掛ける。

玄関のドアを開けると、夜の外に出た。
生温い風が吹く。

そこで初めて深呼吸をした。
思わず唇を触る。

私、平良と、キスした・・・?

賑やかなはずなのに、何の音も耳に入ってこなかった。