「座りなさい。他のお客さんに迷惑だろ」
父さんが俺を見上げて窘める。
そこがガキなんだよと言われているような瞳に耐え切れずに、
渋々座り直した。
「とにかく、家を出るなんてダメだ。
きちんと高校に行きなさい」
お父さんに絶対反対されると言った
母さんの声が耳奥にこびりついている。
本当にその通りになって嫌気がさした。
期待した俺がバカだった。
父さんなら分かってくれると、
そんな淡い期待、抱くんじゃなかった。
大人はみんな、自分勝手。
都合が悪いとすぐにガキ扱いする。
嫌んなるよ、まったくよ。
「高校になんて、絶対行かねぇかんな」
「楓。もう少し大人になれ。高校に行かないなんて
わがまま言うな。父さんだって―」
「うぜぇな。父さんだって、なんだよ。
家にろくにいねぇくせによ。
……俺が何も知らないと思うなよ」
「なに?それは、どういう……」
「てめぇなんか父親じゃねぇ!さっさと失せろよ!」
「か、楓!」
勢いよく立ち上がって、店を出た。
すぐにケータイが震える。
父さんからの電話が鳴り続けてしんどかったから、
ケータイの電源を切った。
くそっ、胸糞わりぃ。
なんで離婚なんかしたんだよ。
親の都合で子どもに迷惑かけて……ばっかじゃねぇの?