あー。むかつく。


勉強なんてうざってぇ。


進路なんか知るかっつの。


高校なんざ行きたくもねぇ。


母さんに金払ってもらって勉強したいなんて思わねぇ。


早く家を出たいんだよ、俺は。




「申し訳ありません!お待たせしました!」


扉を勢いよく開けて、
母さんが慌てた様子で顔を出した。
その顔を見て、舌打ちを繰り出す。
母さんは俺を一瞥して隣の席に座った。


「これは、これは、二宮さん。
 お忙しい中すみませんね」


担任の坪倉が眼鏡を上げながらそんなことを言う。


そう思うんなら呼び出すんじゃねぇよ。


「いえ、その……うちの子が何か?」


「その、ね?進路調査票を提出してもらったんですが……
 白紙でして。どうしたものかと思いまして」


はっと息をのむ音がした。


母さんが俺を見つめる。
そしてすぐに担任に向かって頭を下げた。


「申し訳ありません。家で言い聞かせます。
 また後日、きちんと提出させますので」


母さんは何度も頭を下げて謝った。


担任が苦笑いをして、フォローをする。


根はいい子だし、頭もいいのでやれば出来る。
どこの高校でも大丈夫だ、なんて言いやがった。


本当にそう思ってんのかすら分かんねぇ。


教室には担任の苦笑いと、
母さんの謝る声だけが響いて、
窮屈な三者面談が終了した。