昔から、よく食べる方だった。好物になるとなおさら。

おかわり自由なら必ず三杯は食べるし、少し良いお値段のコース料理なんかでは満腹にはならないし、自炊なら少し多めに作るし、牛丼は特盛を頼む。
特段食にこだわりがあるわけではないし、好き嫌いも少ない。しいたけは例外だけど。
けれども食べる量は昔から同世代の女の子達とは違った。


『お前と外食するの恥ずかしいし、食費もかさむし疲れた』

いくら自分の分は払うと言っても、割り勘にしようと言っても、かたくなに払わせてくれなかった元彼が言ったセリフ。

「……だーかーら、自分のは自分で払うって言ってたじゃん!」

私に10:0で非があるみたいな捨て台詞で、ふりやがって……

家の近くの牛丼屋の角の席で、周りに聞こえないくらいの小さな声で愚痴りながら二口目を頬張る。

……嫌なことを思い出しちゃった。なれない合コンなんて行くもんじゃないな。

ふられたことを知った友人に誘われ、たいして彼氏もほしくなかったのに、押しに弱い性格から『次を見つけよ!次を!』という言葉にふらふらと合コンへついていってしまった。
金額は男性側が6割、女性が4割。友人から聞かされたその情報に遠慮して、ちびちびと飲み食べするだけに抑えていた胃袋は、誰のお眼鏡にもかなわずひとり帰路につくころには悲鳴をあげていた。

自分で払う制度だったら、友人に『いつもみたいに食べるとまた引かれるよ』と言われなければ、もう少し食べたんだけどなあ……


性懲りもなく空腹をひとのせいにしてしまい自己嫌悪に陥った思考を振り払うために、付け合わせのサラダを口一杯に入れた。