父は、なんて返したんだっけ…。

月の光と街灯の光が丁度いい。

街の光は嫌いじゃない。だけど、
この明るさがどこか落ち着かせる

懐かしいこの静けさ

「遠坂」

相沢の声にハッとして、相沢に顔を向けると
いつもは見せない真面目な顔つき

「…なに?」

なにかを言おうとしては、深呼吸して
また言おうとしては詰まったように
息を吐き出した

「…あのさ、」

私は黙って相沢の言葉を待った

次第に私の心臓の音が早くなった

「俺と、付き合わないか?」

相沢が発した言葉に私は固まった

相沢を恋愛対象で見たことなど1度もなかった

なにかを言おうとしてみたが、
自分でブレーキをかけた

下手に今、言葉を発さない方がいい

言葉を選んで、考えるべきだ

「…ありがとう。考えさせて」

そう私が小さく言うと相沢は分かった。と、
頷いて来た方向に戻るように帰って行った

その相沢の後ろ姿を見送り、
姿が見えなくなっても、私は立ち尽くしていた

三十路まであと1ヶ月の夏