「着きましたね」
「うん」
数時間座っていた2人は電車から外に出ると、腕を伸ばして身体全体を伸ばして息を大きく吸った。
息を吐くと、そのボルドーの街に足を踏み入れた。
「空気が美味しい気がします」
「うん、確かに。やっぱり、都会とは違うね」
ボルドーの空は、パリのそれよりも低く感じた。
尚は鞄から地図を取り出すと、快晴の青空の下、旧市街を目指して移動し始める。
その後を、にこにこと笑顔を浮かべた南が着いて行く。
2人は路面電車に乗り込むと、その電車の窓からボルドーの街の雰囲気を味わう。
都会のように高い建物は少なく、背の低い建物が並んでおり、違ったフランスの顔を見せる。
人々も、どこかパリの人たちよりも余裕がある感じで、みんなそれぞれの時間を思いっきり楽しんで過ごしているように見えた。
路面電車はガロンヌ川沿いを進む。
2人はその途中の駅で、それから降りた。
「ここがあの有名な場所ですね」
地上の風景が、地面に張られた水の上にも移り、まるで同じ世界が2つあるかのように見えてしまう。
「なんか、開放感があっていいね」
「そうですね。走りたくなっちゃいます」
と、走る真似をする南に、尚は純粋な子どもみたいだなと微笑ましく感じた。



