音楽のほとりで


「す、すみません」

「いえ」

我に戻った奏音は、いつもの口調で桜に謝る。

桜の顔は紅潮しており、恥ずかしさから奏音の顔を見ることが出来ずに下を向いていた。

「その、嫌じゃなかったですよ。いつも穏やかな奏音さんだから、ちょっと驚いちゃっただけです」

「あの、本当に、何と言ったらよいか」

奏音は、唇を触って自分を落ち着かせようとしているも、逆にそれのせいで先ほどのことを思い出してしまい、そわそわとしてしまう。

目の前にあるお茶を一気に飲んだり、立ったり座ったりをしていると、ようやく心は鎮まってくる。

「そろそろ、時間ですね」

「そうですね、明日からまた仕事ですね」

「ええ、頑張りましょう。あ、桜さん、8月で空いている日が分かったら、教えてくださいね。飛行機のチケット、取っておくので」

「あ、はい」

桜は、スケジュールを取り出してそのことをメモするが、なぜそんなにもパリに拘るんだろうと内心では思っていた。

例えば、ドイツやイギリスでもいいのにと思う。

「じゃあ、分かったら連絡します」

「はい。じゃあ、送っていきます」

「ありがとうございます」

奏音の両親に挨拶をしようとするも、2人はどこかへ出かけていて留守だった。

むしろ、そちらの方が良かったと、先程のキスのことを思い出して桜は顔が熱くなるのだった。