音楽のほとりで


団子を手にすると、それは美味しさを放っており桜は待ちきれずに一口それをパクッと食べてしまう。

「んん、美味しいっ」

「僕も一口食べてみようかな」

桜がそれを食べる隣で、奏音も歩きながら食べ始める。

「うん、本当だ、すごく美味しいですね。なんか、桜餅のような味がします」

「そうですね、それは的確なコメントです」

周りにも、桜たちと同じピンク色の餡の塗られた団子を食べている人が多く、それがいかに人気なのか分かる。

水色の空にピンクの花びら、そしてピンクの餡、パステルカラーで彩られたその空間は、癒しを与えてくれた。

「あの、桜さん」

「はい」

大きな桜の木の前に来ると、奏音は急に立ち止まる。

それに従って桜も歩みを止める。

「僕と、付き合ってくれませんか?」

「……はい」

その返事は、この雰囲気に流されたのか、桜の本心なのか、それは誰にも分からない。

「やったあ」

そう言って、拳を作って嬉しがる奏音は、初めて桜の前で子供のような仕草を見せ、それを見て桜は一瞬驚くも、なんだか奏音が親しみやすくなったようでふと笑ってしまう。

「こんなに嬉しいと思ったのは久しぶりです。いや、むしろ初めてかもしれない」

「そんな、おおげさですよ」

「僕、本当に恋愛には縁がないんですよ。というか、あまり興味がなかったんです」

奏音はそんな自分を恥じるように、小さな声でそれを言うのだった。