時が過ぎるのは早いもので、もう冬も終わろうとしている3月、桜たちが卒業した大学で尚のコンサートが開催される。
「あ、南さん」
そこには、南の姿もあった。
「桜さん、お久しぶりです。大学に来たのも大分久しぶり」
「あれ、ルイさんは?」
「どこかに行っちゃったんです。やっぱり彼のピアノを聴くのが怖いのかしら?」
と、桜は首を捻っている。
会場には、大学関係者や一般の人が次々と現れて、その座席を埋め尽くしていく。
もう1人の人物を2人は待っていた。
すると人ごみの中から、その人物が姿を現す。
「奏音さん」
「2人ともお久しぶりです」
「お久しぶりです」
3人は一列に座ると、尚の登場を今か今かと待った。
暫くして、コンサートの開始を知らせるブザーが鳴る。
「始まりましたね」
「ええ」
ようやく、待ちに待った尚の姿がホールに現れる。
尚はいつものように観客の方を向いた時、桜の姿を探して目を合わせるとにこりと微笑んだ。
堂々とした雰囲気を纏いピアノ椅子に座ると、鍵盤の上に指を置き、それを鳴らし始める。
春の訪れにふさわしい長閑で優雅な曲から始まるコンサートは次々とその曲を変えていく。
ピアノを鳴らしているのではなく、ピアノで歌っているようだった。
そんな素晴らしい時間に、あっという間に幕が下りようとした時だった。



