リビングに連れてこられた尚は、1人の人物に目を向ける。
「成宮ルイ……」
尚が彼の名前を呼んだ時、そのタイミングで彼のスマホが着信を知らせるために音楽が鳴らせた。
「出てもいいですよ」
南はそう言うと、尚は遠慮がちにそれに出る。
「桜? え、今? そうなの? パリにいるの?」
その名前を聞いた南は、電話している尚の近くに行ってそのスマホを取り上げる。
「あ」
「お久しぶりです桜さん。今、ちょうど尚さん私の家にいるんです。桜さんもよろしければ来てください。今から住所言いますね」
そうして、住所を述べた南は「じゃあ、待ってます」と言うと、その電話を切ってしまう。
「南さん」
「数駅離れたところにいるらしいんですけど、すぐ来るって言ってましたよ」
「その、色々と聞きたいことがあるんだけど」
と、ルイの方を見て尚はそう話す。
「せっかくですし、桜さんが来るまでゆっくりしてください。コーヒー、飲みますか?」
「いや、いいよ」
尚はどこにいたらいいか分からずに、部屋の隅へと来ると、そこでじっとしている。
何かを考えているのか、ふりなのか、1人顎に手を当てて窓の外のある一点をじっと見ていた。
ルイは、特に何もすることなくソファに座って水を飲んでいた。
しかし、その目は落ち着かず動揺が見え隠れしている。
そして、ほとんど部屋の中の動きがないまま数十分ほど過ぎたとき、誰かが部屋に訪ねて来た。



