音楽のほとりで


尚は、まさか桜がパリに来ているということも知らずに、いつものようにあのカフェでエスプレッソを飲んでいる。

朝のコーヒーは、その苦さが寝ぼけている頭にはちょうど良い。

朝の空気を感じながらゆったりしていると、南からメールが届いた。

それは、今日南の家に来てくれないかというものである。

そこには、住所が記されており、それはここからそう遠くもなかった。

ちょうど大学もバカンスな為に、時間に余裕のある尚はそれに対して了解と返事をする。

時間までまだまだ余裕があるために、尚は再びゆっくりと朝の時間を楽しんでいた。







時間になり書いてある住所を頼りに建物の前まで来ると、そこの五階を目指して尚は階段を上り始める。

何の用だろうと考えながら階段を上り進めていくと、あっという間に五階に辿り着いた。

そしてインターフォンを鳴らすと、少しして物音が聞こえて南が出て来た。

「どうぞ」

と、ボルドーに一緒に行った時とは違う雰囲気を纏った南は、中に入るように尚に言う。

尚はそれに一瞬躊躇うも、南に言われるままにその部屋の中へと入って行った。

そして、ゆっくりと扉は閉められた。