音楽のほとりで


空港には、桜たちと同じように大きなキャリーバックを引いている人がたくさんいる。

その国籍は様々で、桜は小さい頃からこの忙しない雰囲気が好きだった。

空港には、街中とは違う独特な雰囲気が漂っている。

「結構時間ぎりぎりでしたね」

「そうですね」

「じゃあ、行きましょうか」









色々と手続きをして、空いた時間でコーヒーを飲んだりしているとあっという間に搭乗する時間になる。

桜たちと同じ飛行機に乗る人がどんどんと同じ場所に移動して、桜と奏音もそれに続いて飛行機に乗り込んだ。

2人は慣れているのか、スムーズに席に座る。

窓際の席に座る桜は、そこから外の景色を眺めている。

どこか、この土地に対して懐かしい気持ちが込み上げてくる。

慣れ親しんだ日本なのに、なぜだろう、桜はとにかくその感情を一人感じていた。

「桜さん」

「はい」

機内も落ち着いた頃、奏音は話し始める。

「僕の親戚に、実は今パリで過ごしている人がいるんです。その親戚のお子さんがピアノを習いたいらしくて」

「流石音楽一家ですね」

「ええ。あ、動き始めましたね」

飛行機は、ゆっくりとその走行を始めた。

もう少しで、この日本の地面から離れる。

何度飛行機に乗っても、この瞬間はいつも興奮するものだ。