「途中で電車にしようかと思ったんですけど、駅も雨だと床が濡れてこの大荷物じゃあ大変ですよね」
「確かにそうですよね。奏音さんっていつも的確な判断ができるので、羨ましいです」
「ははっ。いつも、とは限りませんよ。僕でも失敗することもあります。それに、その的確な判断がいつも正しいことかどうかは正直分かりませんから……」
「まあ、たしかに、そうですね」
「まあでも失敗しても次に進めばいいんです。僕の人生なんて失敗の連続ですから」
「奏音さんの人生が? それなら私は常に失敗の人生ですね」
2人は、品よく互いの顔を見合って笑う。
桜は、頭の中で奏音の失敗した姿を思い浮かべるも、勝手に想像した奏音はそういう時でも冷静で、それを失敗したと思わせないような姿が見えた。
「人間、ちょっと失敗するくらいが可愛いですよ」
「たしかに、そうかもしれませんね」
外を見ていると、だんだんと空の切れ目から光が出てきて、少しすると雨はどこかへといってしまった。
先程の天気からは想像できないほどの青空が現れる。
「おお、晴れましたね」
「はい、やっぱり晴れっていいですね」
雨も好きだと言っていた桜は、その青空を見るとやはりその青々しさに心を奪われる。
「もうすぐ着きますね」
空港に近づいてくるほど建物は減り、そうして目の前に巨大な建物が見えてくる。
タクシーは走るのを止めた。
「じゃあ、荷物お出ししますね」
「はい、ありがとうございます」
久しぶりに外に出た桜は、身体を伸ばして深呼吸をし、一気に空気を吐く。
「では、行きましょう」
「はい」



