「おはようございます」
桜が扉を開けると、いつもよりも軽装の奏音がいて、まずは朝の挨拶から始まった。
「それじゃあ、行きましょうか」
「ええ、ご両親に挨拶は大丈夫ですか?」
「今日は朝早くから2人でどこかに出かけると言っていて、もういないんですよ」
「そうなんですか。仲が良くて羨ましいですね。今日は生憎の雨のなので、タクシーを呼んであります」
すると、その言葉通り一台のタクシーが家の前に止まる。
そして、中からドライバーとしては珍しい女の人が出て来た。
「長谷部さまでしょうか?」
「はい、今行きます」
桜と奏音は、傘をさしてタクシーの元まで行くと、運転手はその荷物を荷台へと運ぶ。
必要最小限なものだけが入った鞄を手に、2人はタクシーに乗り込んだ。
タクシーの窓を、今日の雨が叩きつけており外の景色はその雫のせいでぼんやりとしか見えなかった。
「雨、降ってしまいましたね」
「そうですね」
「桜さんは、雨って嫌いですか?」
タクシーの中で、話題は当たり前かというように今日の天気の話になる。
「いえ、意外と好きですよ。なんていうか、雫が傘に落ちてポンポンとなる音とか、後は少し薄暗くてそれがなんだかノスタルジックなところとか。晴れの日では出せない雰囲気が、雨にはありますよね」
「そうですね」
「まあそれでも、旅の1日目は晴れて欲しかったです」
「そっちの方が色々と便利ですよね」
タクシーは、着実に空港に向かって二人を乗せて走っている。



