今日は、朝から雨が降っており、桜が目を覚めるとそれがポツポツと窓を叩く音が耳に入ってくる。
せっかくのパリ旅行の初日は、残念ながら雨で始まる。
昨日、忘れ物がないか何度も荷物を確認したが、起きたばかりの桜は、顔も洗わずにまずその荷物を再確認した。
絶対に忘れてはいけないもの、絶対ではないけれどあったほうがいいものをそれぞれ確認して、桜はキャリーケースに鍵をする。
それを持ってみると、当たり前だが重かった。
「パリ……か」
桜が彼のことを思い出してしまうのも無理はない、桜がこれから向かう花の都に彼はいるのだから。
今頃、南さんと一緒にパリの街中を恋人同士でお洒落に歩いているのだろうか、いや、もしかしたらパリジェンヌとかもしれない。
そんなことを考えていると、時間は刻々と過ぎていく。
まだパジャマ姿で、朝の準備が何もできていない桜は、自分の部屋から出ると洗面台へと早歩きで向かって行った。
そして、桜の母が用意してくれた簡単な朝食を頬張ると再び部屋に戻って来て着替えをする。
朝というのはどうしてだか他の時間帯と比べてあっという間に過ぎてしまい、時計は奏音が迎えに来る5分前を指していた。
荷物を全て下ろしリビングでほっと一息ついていると、人が訪れたことを知らせる音が鳴り響く。



