何時間外にいたでのであろうか、家に帰るとそこに南の姿はなく、ルイは早速夕食の準備に取り掛かる。
とは言うものの、凝った料理など作ったこともなく、ルイは部屋の中にあるパソコンで簡単な料理を調べる。
「パスタが簡単そう」
調理の手順などを見て、ルイはそう感じる。
キッチンに乾燥したパスタがあったことを思い出し、ルイは買ってきたトマトソースを使ってそれを作ろうと決めた。
その後はパソコンとキッチンの間を行ったり来たりして、失敗しないように何度も確かめながら料理をしていく。
「サラダとかスープもあったほうがいいよね」
と、独り言を言いながら、しかしその手を止めることなく、どんどんと不器用ながらに料理が出来上がっていく。
スープを作るために、野菜を切ろうと包丁を持つルイは、その大切な指を切らないように慎重に慎重にそれらを切る。
トントントンと玉ねぎを切っていると、だんだんと目が痛くなってきて、ルイは涙を拭きながら一生懸命に続けた。
ドアが開く音がした。
「おかえり」
「ただいま」
ちょうど7時を過ぎたころ、南が帰ってくる。
「ルイ……」
テーブルの上に並べられた料理を見るなり、それに心を打たれて、南は涙ぐんでその声は鼻声になってしまう。
「なんで? ここまで」
「自分のせいで、南が誰かを傷付けるなんてこと、させたくないから。南のヴァイオリンの音に、濁りを与えたくないから」
そう言うと、ルイは南をそっと抱きしめた。
「ねえ、だから、今南がしようとしていることがあったら、止めてほしい。誰も幸せになんてならない。僕はもう、大丈夫だから」
南は、何も言わず、ただただルイに抱きしめられているばかりだった。



