すると、お目当てのワインを探していたようで、南は特に尚に声を掛けずにそのワインを購入する。

南はそれをまるで薄いガラスの美術品を扱うかのようにそっと鞄にしまった。

しまい終わると、ようやく尚の元へと戻る。

「尚さんは何か買いますか?」

「どうしようかな……」

尚は、色々なワインに視線を移しながら南と会話をしていた。

「せっかくだし、尚さんの生まれた年のワイン、買ってみてはどうですか? さっき、憧れるって言ってたし」

「それもいいかもね」

尚は店の中にいる人に流暢なフランス語でその該当するものを見つけてもらうように言う。

数分後、店の人は一本のワインを持ってくると尚に渡して、それを尚が確認するとまた店の人にそれを首を縦に振りながら笑顔で渡す。

そのままレジへと行くと、尚はそれを購入した。

「何か特別なことがあった時に飲むよ」

南の方を向くと、尚は桜の顔を思い浮かべながらそれを言う。

「それが良いと思います。せっかくの特別なワインだし」

尚もまた、それをそっと鞄の中にしまう。

一瞬だけれどそのワインに向かって微笑んだ。

それを飲むときのことを、想像しているのだろうか。

2人はワインの店から出ると、隣の店へと移動して、実に豊富な種類の石鹸を見ている。

それはお土産にも人気らしく、南はオレンジや緑など、数個を手に取るとその全てを購入した。

隣の尚も、幾つかを選んで、記念にとその石鹸を買ったのだった。