「この辺に、ガレットが美味しい店があるみたいだよ」
尚は、あらかじめパリにいる時に調べていたページにアクセスすると、その店はここからわずか数分のところにあると結果が出た。
「行きましょう」
先程まで水溜りの上を歩いていた南は、小走りで尚のところに来ると、その腕を掴んで笑顔を彼に向ける。
それに返事をすると、地図を頼りにそこの店まで歩いた。
それは、本当に数分のところにあり、中は地元の人と思われる人で賑わっている。
尚は、慣れたフランス語でお店の人と話して中に通してもらう。
狭い店内は、隣の席とも席が近く、その顔がはっきりと見える。
「フランス語、流石ですね」
「もう、随分と長いことフランスにいるからね。最近では日本語の方が不自由になっちゃうときもあるよ」
「分かります、その感覚」
2人が話していると、人の好い雰囲気をした夫婦が「こんにちは」と片言で挨拶をしてきた。
それに、2人は日本語で返すとその夫婦は再び二人の時間を楽しむ。
「なんか、いいですね。ボルドー」
「うん、みんなおおらかそうだ」
と、尚は店内にいる人たちの顔を一通り見てそう言った。
メニュー表を見て、尚はホウレンソウのガレットを、南は伝統的なベーコンのガレットをそれぞれ注文する。
デザートはクレープで、2人ともチョコレートのそれを選んだ。
瓶にいれられた水が来ると、喉が渇いていたのだろうか、2人はすぐにそれをコップに注いで飲む。



