「今日は楽しかったね。スイーツは美味しかったけど,萌の作ったスイーツの方が美味しかったかもなーんて。今度作ってよ,萌の手作りケーキ。あれすごいおいしいもん。」
「ありがとう。じゃあ今度特大ケーキ作っちゃおうかな〜」

変だ。ケン兄は今日変だ。最初はいつも通り優しいケン兄だと思っていたけれど,違う。今日のケン兄は無理して笑ってる。
どうして?私と出かけたくなかったのかな?ケン兄は優しいから付き合ってくれたの?そうかもしれない。女子高生と一緒に買い物なんて同じ大学の人にバレたらまずいもんね。
「ケン兄,無理しなくていいよ。」
「えっ?」
私は笑って言った。
「ケン兄,今日ずっと無理して笑ってたでしょ。幼馴染ナメちゃだめだよ。昔からケン兄は優しいもんね。私となんか出かけたくないのに,断れないから来ちゃったんだよね。ごめん,無理させて。私これからはケン兄をわざわざ誘わないようにするよ。」
「萌,何言ってるの?俺,無理してなんかないよ?今日ほんとに楽しかったもん。」 
「えっ?ウソ!」
不思議そうな顔をするケン兄は嘘をついているようには見えない。でもあの笑い方は確かに…。
「ほんとに?」
私はケン兄をまっすぐ見つめる。
「うん,もちろん。俺,萌に嘘ついたことないもん。」
なんだ,勘違い……?だといいけど。

「あっずっと言い忘れてたけど,今日はいつもと雰囲気違ってるね。」
ケン兄気付いてくれてたんだ!
「うん!これ,菜摘がいつも服買ってるところで買ったんだ。大人っぽい?」
「大人っぽいかどうかは分かんないけど,可愛いよ。でも俺はいつもの萌の方が好きかな?」
「そっそうかな!?」
油断してた!まさかここでドキドキさせにくるなんて!やっぱりいつものケン兄だなあ。