―3日前―

「『ケン兄,日曜日,買い物付き合ってくれない?』よし,送信っと!これで明日こそケン兄をドキドキさせれるぞ〜!」
私はいつにもなく舞い上がっていた。それもそうだ。ついにケン兄をドキドキさせる方法を思いついたんだから!

作戦を思いついたのはついさっきの事だ。今日は土曜だというのに姉の姿が見当たらなく,私が母に聞くと,今日は同じ高校の男子と出かけたというのだ。ここ数年休日はずっと部屋に閉じこもっていた姉が男子と出かけたというのだから母の機嫌も良く私も驚き半分,嬉しさ半分といった気持ちだった。
そして夕方になって姉は帰ってくるなり私の部屋に入ってきた。
「助けて萌!」
「おかえり,お姉ちゃん。お腹空いたなら『スイーツショップKOIZUMI』のケーキが棚に入ってるよ。」
「〜〜!それは後で食べるけど!」
「どうしたの?デート上手くいった?」
「その逆!萌が前にくれた服で行けばオシャレだし安心かと思ったのに,アイツに『いつもと雰囲気違いますね。』ってなんか顔を赤くして言われたの!きっと『学校とキャラ違いすぎるだろwww いつも地味なくせにwww』って思って笑いをこらえてたんだ!もう嫌!!きっともう彩星高校の裏掲示板で広まっちゃってるよ。助けて萌!」
姉よ,ネガティブが過ぎます…………。その男子が哀れだ…。
うちの姉はいつもこうだ。普通にしていれば美人なのに,ネガティブな性格で地味な格好ばかりだから高校でも全く目立たない女子として認識されている。
友達は確か一度うちに連れてきた結城さんという人だけだ。 
それにしてもこの姉がデートなんてと思ったが,そういえば一昨日,姉が面識のない後輩に告白されたと聞いていた。今彩星高校で1番のビッグニュースになってるんだっけ。相手は…………,覚えていないけれど,イケメンと聞いている。
まあどんなイケメンでもケン兄には及ばないと思うけど。