仕事帰りにバイクの専門店に寄る登坂。


先日のレンタルバイクの故障以来、購入を検討しているのだった。


夏月の会いに行くなら、バイクで行きたいと思っていた。


とはいえ、撮影で使ったバイクは、1000万円超え…。


三代目で稼いでいると言っても、そこまでの金額をバイクにつぎ込むまでではない。


今日は、ハンドルを握ったり、シートに触る程度。


これだというものには、出会ってなかった。


ツアーが始まるとゆっくり休みもとれないし、今買うのはベストではないとも思っていた。


(ま、今日も見るだけのつもりだったし、帰るか。夏月さんに会えるのはいつのことかなぁ)


「さぁて、夕飯何にしようかなぁ」


と店を出て、どこへ行こうかと考えながら歩いていた。


向こうの方で、数人のグループが店の前で丁度解散するところのようだった。


服装からして、結婚式の二次会のような雰囲気だった。


そして、そのグループの中から、一人の女性がこちらの方へ歩いてくる。


薄い水色に花柄の膝丈ドレスにハイヒール。

(んー、イケてるな)


ついつい、見てしまう。


「あっ」


それは、見覚えがある顔だった。


「夏月さんっ」


思わず声を掛けてしまった。


髪をアップにして、フルメイクなので先日会った時とは、全く違う雰囲気ではあったが、間違いなく夏月だ。


「え?」
 

夏月は立ち止まり、声の主を探す。


登坂は、夏月に近寄りにっこり笑った。


「あ、広臣くん」


夏月は、酔っているせいか少しうっとりとしていた。


(この前と全然違うじゃん)


思わず、見惚れてしまう。


しかし、まさか、こんな街の中で出会うとは思ってなかったので二人ともが、この偶然に驚いた。 


「すごい、もう一回会えるなんて、思ってもみなかった」


「まさかこんなとこで会えるとは!すごい偶然だね」


登坂は、この再会に感激した。


「ね、夏月さん、時間ある?」


「時間?うん、今日は、この後ホテルに帰って寝るだけだから、大丈夫だよ」


そう言って、夏月がにっこり笑う。


「じゃあさ、この前のお礼に一杯おごらせてくれる?ゆっくり話もしたいし」 


「え、一杯?うーん、今日は、ずっと飲みっぱなしだから…飲めるかな〜」


さすがの登坂の誘いでも、辛そうだった。


「あぁ、そっか、じゃあ…、お茶でも」


すると、夏月がニヤっと笑った。


「なんだか、ナンパされてるみたい(笑)



その言葉に登坂も笑った。


「そうそう、他の男がナンパする前に俺がナンパした。あぁ、ナンパしても大丈夫?彼氏とか」


「ご心配なく、彼氏いない歴、んー何年かなぁ、ふふふっ、臣君にナンパされちゃった。ね、皆んな臣君って言うんでしょ」


「そうだよ」


「フフ、Wikipediaで調べちゃった」


「俺も夏月さんの店のホームページ見たよ」


「え、見たの?…恥ずかしいよ」


「とりあえず、移動しようか?」


「うん」