夏月がふと時計を見るともう0時を過ぎていた。


「もうこんな時間」


「ん?もう少し一緒にいたいな」


登坂は、名残惜しそうな表情。


「うん、一緒にいたいけど、朝からずっとドレスでいたから、疲れちゃって」


夏月が元気のない顔をすると、


「そっか。あぁ、俺のでよければ、Tシャツ位なら着れるよね?」


「うん、Tシャツならいいかも」


だが、登坂に借りたTシャツとハーフパンツは、夏月には随分大きかった。
 

洗面所の鏡の前で、肩をすくめる夏月。


コンコンッ


登坂がドアをノックする。


「どお?」


少しだけ、ドアが開いて夏月が顔を出した。


「大きい…」


登坂がドアを開けると、ダブダブの服を着た夏月がいた。


「クスッ…可愛いな」


登坂は、口元を隠しながらにやける。


「ねぇ、おかしい?やっぱり、着替えよ」


夏月がドアをしめようとすると、登坂は慌てて夏月の手を止める。 


「ごめん、可愛いから、つい…、ね」


夏月が口を尖らせながら、


「じゃあ、とりあえず帰るまで借りてていい?」


そう言うと登坂は、ニヤけるのを我慢しながら、


「うん…」


登坂は、少し考えて、


「いっそのこと、泊まってく?」


と聞いた。


「え、泊まる?」


固まる夏月。


「あ、やっぱ、それは、ないか」 


「あの、それはまだ心の準備が…」


「いやっ、変な意味じゃなく、ちょっとでも長く一緒にいたいってことだからね」


「うん…でも、今日はホテルに荷物置きっぱなしだし、…帰るね」


「うん」


登坂は、残念そうだか夏月は内心ほっとした。


(もう、偶然会っただけでもびっくりなのに、いきなりこんなことになって…お泊りなんてしたら、心臓がもたないよ)