_____ ガチャッ。
『 スイ、起きて。朝だよ。 』
窓から差す光に、夢と現実をさ迷っていると、傍から柔らかい声がした。
ゆっくりと瞼を開けてみると、目の前にはクラルさんが居る。
彼は私を見るなり、小さく『 あ、起きた。 』と呟き、隣にある椅子に腰を下ろした。
「 おはようございます、クラルさん! 」
『 おはよう。よく眠れた? 』
「 はい、ぐっすりです! 」
『 そう、なら良かった。 』
そのままベッドから降りて、近くにある小さな洗面台で顔をゆすぐ。
冷たくて透き通った綺麗な水は、目覚めにぴったりだった。
そして拭くものを探している時、額から頬、頬から顎を伝って、一粒の雫が床に落ちる。
「 あの…拭くものって、ありますか? 」
手の平で、ポタポタ、と垂れる雫を床に落ちないようにしていると、クラルさんは拭くものがどこにあるのか教えてくれないままだった。
不思議に思いながら彼を見つめていると、洗った時に濡れてしまったのか、前髪からも雫が滴り落ちる。
『 いい?スイ。魔法っていうのは、簡単に使えるようなものではないんだよ。 』
彼は私の濡れた頬を撫で、その手をそっと横にずらし、藍色の髪に触れた。
『 魔法は、自分の感情で操るものなんだ。 』
「 …感情で、操る? 」
そう言われ、私は眉を寄せてそう聞き返した。
するとクラルさんは、落ち着いた声で『 だから落ち着いて、慌てないようにね。 』と言う。
どうして今、そんなことを言うんだろう。そんなことを思っていると、彼は、その目をさっきよりも少しだけ細めた。
『 スイ。君が何の使い手なのか、よく思い出してごらん。 』
私が、何の使い手か。