この術、簡単そうに見えるが術の中でもかなり難しいものだ。ストレッタでも限られた奴しか使えない。失敗すると最悪落ちて死んじまうからな。
まぁ、俺やラグにとっては普通に使い慣れた術である。
「っと」
風が治まると同時、俺達は雪面に着地した。
これを、風にもよるがあと10回かそこら繰り返せばストレッタに到着する。
ふと同時に着地したはずのラグの方を見るが姿がない……いや、視線を少し下にずらしたら居た。ちっさいラグが。
はぁと息を吐き縮んだ自分の姿を確認していたが、こちらの視線に気付いたのかぎっと睨み上げてきた。
や、その顔で睨まれても全然怖かないしな。
「あーあ。あの頃のお前は俺のことをそんな目で睨んだりしなかったのになー」
「だっから、そーいうのをやめろって言ってんだ!」
「えー、別にガキ扱いはしてないだろー? さて、肩車してくか?」
「思いっきりガキ扱いじゃねぇか!!」
「冗談だっつーの」
本っ当にからかいがいのある奴だよなぁこいつ。
その後、片腕で持ち上げようとしたら今度は荷物扱いするなと怒られたので、結局俺はラグを負ぶるかたちで次の風に乗った。