こんなに積もった雪の上を歩くのは中学で行ったスキー教室以来で、こんな状況でなければはしゃいでいたかもしれないが、今はビアンカが心配だ。
 ライゼちゃんから預かった、フェルクレールトにとって神聖な存在であるビアンカ。そんな彼女に何かあったら大ごとだ。
 私は雪に足を取られながらも急いでセリーンの隣へ並んだ。

 ビアンカはしっかりと目を瞑り、声を掛けても、ラグがどんなに騒いでも、やはりぴくりとも動かない。

「息は一応しているみたいだな」

 顏の正面に回り込んだセリーンが、ラグを抱えていない方の手をビアンカの鼻の前に差し出していた。

「じゃあ、眠ってるってこと? ……あ。」

 そのときふいに頭に浮かんだ言葉があった。

「もしかして、冬眠?」
「冬眠だぁ!?」

 ラグが甲高い声を上げた。