「セリーンは? あ、腕の調子を見に行ったって聞いて」

 自分の腕に触れながら言う。
 ……本当は身体の調子のことも訊きたかったのだけれど。

「あぁ、大丈夫だ。問題ない」

 こちらを安心させるように目を細めた彼女に私は心底ほっとした。

「そうそう、ビアンカも平気そうだったぜ。どうせお前明日にはここを発つつもりなんだろ?」
「あぁ。病人がいないのならこんな所に留まってる理由はないからな」

 ラグのそのつっけんどんな言い方に少々引っかかりは感じたけれど、ビアンカもちゃんと起きていると聞いて安心する。

「次はどこに行くの? やっぱ、そろそろビアンカはフェルクに返してあげなきゃいけないよね」

 言うと、ラグは少しの間を置いて、セリーンに視線を向けた。

「クレドヴァロールには行ったことあるか?」
「……あぁ。随分前にだが」
「クレド……? 遠いの?」
「あのデカ蛇なら7日あれば余裕で着けるはずだ」
「7日……」

 ビアンカがいなかったら一体どのくらいかかる距離なのだろう。なんだか怖くて訊けなかった。
 しかしビアンカを帰してしまったらその後の旅は徒歩や船になる。そのクレド……なんとかという国にエルネストさんがいてくれることを願うばかりだ。