慌ててお腹を押さえるがもう遅い。ラグが眉間に皺をいっぱいにしてこちらを睨み上げてきた。

「ご、ごめん」

 思わず謝る。彼にお腹の音を聞かれるのはこれが初めてではなかったが、何度だって恥ずかしいものは恥ずかしいし、その上このタイミング。顔が熱くてしょうがなかった。

 ラグは長い長い溜息を付いてから、やっと口を開いてくれた。

「下に行くか。お前の分も……」

 言いながら立ち上がるラグ。でも言葉の途中で何かに気付いたように視線をドアの方へ向けた。
 そして私も勢いよく駆け上がってくる二つの足音に気付く。

「セリーン達かな?」

 私が言い終わると同時、ドバンと音を立ててドアが開いた。そこに立っていたのは予想通りセリーンとアルさんで。
 笑顔でおかえりなさいと言おうとして、でも二人の表情を見てそれを呑みこんだ。

「貴っ様……! 私はカノンを気にしていろと言っただけだ! 誰が部屋へ連れ込めと言った!?」
「しかもお前またでかい声で怒鳴ったって!? 俺があんっだけ優しくしろって言ってんのにもー、お兄ちゃんは情けないぞ!!」

 二人の剣幕に隣に立っているラグが小刻みに震えているのがわかって私は焦って口を開く。

「ち、違っ」
「あぁー! ったくどいつもこいつもぉぉーー!!」

 ラグが頭を抱えそう怒鳴るのを聞いて、きっと、いや間違いなくその中に私のことも含まれているのだろうと、もう一度お腹を押さえたのだった。