初めその意味はわからなかった。
 銀のセイレーンを脅威と恐れるのはわかる。だが忠誠を誓えば、というのはどういうことだろう。
 けれど以前ルバートで私を生け捕りにしようとしていた兵士たち、そしてその時のラグの言葉を思い出してはっとした。

 ――その力を利用したくなったか……。なんにしろ、他の国に渡って欲しくはないだろうな。

 ラグの考え通り、銀のセイレーンの力を利用……自国の力にしようということなのだろうか。
 私にそんな脅威になるほどの力は無いし、ストレッタとも何の関係もないというのに……。
 ラグに、今すぐに伝えたいと思った。

(ラグ、ストレッタに着けたのかな……)

 彼は私が連れて行かれたとわかったらどうするだろう。
 ラグはいつも助けに来てくれた。最初に会った時も、ルバートでも、そしてフェルクのあの村でも。
 彼には私を助ける理由がある。だからきっとまた……いや、それとも、いい加減面倒だと今度こそ見放されてしまうだろうか。

 どちらにしても今回は距離が離れ過ぎている。助けに来てくれたとして、それまで私が無事でいられるかどうかもわからない。
 ランフォルセに着いて私が何の役にも立たないとわかったら、おそらくはすぐに処刑されてしまうだろうから……。

 思わず後ろで繋がれた両手を祈るように強く握っていた。

 それに一番気掛かりなのはセリーンだ。
 空は相変わらず厚い雪雲のせいで薄暗く、あれから何時間が経過しているのか全くわからなかったが、もう手当は終わっただろうか。あの街に医者はいるのだろうか。――そして、セリーンは再び剣を握ることができるだろうか。

 私を守るために重傷を負った彼女。もしフィエールの言う通り、傭兵である彼女が剣を持てなくなってしまったら――そう思うと胸が痛くてたまらなかった。