「そうでなくて本当に良かった」
「心配かけちゃってごめんね! ありがとう!!」
私はスプーンを置いて改めてセリーンにお礼を言う。後でラグにももう一度お礼を言わなくては。
出会ってからまだ間も無い、しかも知らない世界から来たという完全に余所者の私をこんなに心配してくれるなんて……。
――いつも思う。
私はラグとセリーンがいてくれたから、この知らない世界でもなんとかこうして生きていられるのだ。二人がいなかったらと思うと心底ぞっとする。
ラグは自分の呪いを解くために私を必要としている。いつもそばにいてくれるのは利害が一致しているから。
そうとわかってはいるけれど、それでも嬉しかった。心から感謝していた。
そしてセリーンは私にとっていつの間にか何でも相談出来るお姉ちゃんのような存在になっていた。
「セリーン達がいなかったら私……。いつもそばにいてくれて、本当にありがとう!」
なんだか急に胸がいっぱいになってしまって、熱もあるせいか泣きそうになりながら言うと、セリーンはそんな私の頭を優しく撫でてくれた。
「きっと、旅の疲れが出たんだろう。カノンにとってレヴールは未知の世界だものな。しかもつい数日前にはあんなに暑い国にいて、今は極寒の地だ。身体もおかしくなる。――しかし、カノンは凄いな」
「え?」
この状況で凄いと言われても、何がなのかさっぱりわからない。
「言葉だ」
「言葉?」
「……気付いていないのか?」
首を傾げているとセリーンは眉を寄せながら続けた
「この世界の言語だ。カノンはこれまでこのレヴールの3つの国の言語を完璧に使いこなしているんだが」
「ぇ、えぇ~~!?」
思わず大きな声が出てしまっていた。
気付くも何も、全くの無意識だ。私は日本語を使っているだけ……のつもりでいた。
この世界で初めて人と話したランフォルセの城下町で言葉が通じ確かに不思議に思ったけれど、それ以来すっかり言葉のことなど忘れていた。



