「なっ、何笑ってやがる!」

 結局怒鳴られながらも、私の笑いは止まらない。
 てっきり先ほどの沈黙は怒りからくるものだと思っていたけれど。

(もしかして、謝るタイミング待ってた?)

 そう思ったら、安堵した分もプラスでなかなか笑いが治まらなかった。
 ブゥもいつの間にか枕元から飛び立ち楽しそうに空中を旋回している。

「大体お前も言わねぇのが悪ぃんだからな! 平気だ平気だって言うからオレは」
「ご、ごめん! だって、あはははっ!」

 彼はそんな私にまだ何か言いたそうにしていたが、諦めたように大きなため息をひとつついた。

「そんだけ笑えるなら、医者は呼ばなくていいな」
「え? うん、ありがとう。こうやって寝てれば多分すぐに治ると思う。だからストレッタに早く行って報告を」
「それなんだが、すでに遅かったみてぇだ」
「え!?」

 驚く私にラグは悔しげに続けた。

「想像以上にランフォルセの奴らの行動が早かった」

 ラグはアルディートさんから聞いたという話をしてくれた。
 ランフォルセからの使者は昨日ストレッタに到着し、そしてルバートでの一件を報告し今朝早くに帰っていったのだと言う。

「そう、なんだ。……折角急いだのにね」
「先に向こうに報告されたってのが痛ぇが、どちらにせよ銀のセイレーンはオレが始末したって話は伝えにいかねーと」

 危惧していた通り、使者からの話を聞き何も知らなかったストレッタは昨日からちょっとした騒ぎになっているらしい。

「で、やっぱりというか当然というか、オレが真っ先に疑われているらしい。だからこの後すぐにでもアルと出発するつもりだ。あいつの術があれば明け方にはストレッタに着けるからな」
「あ、やっぱりアルディートさんも術士なんだね」