流石に言い逃れ出来なくなったラグは最初小刻みに身体を震わせながらされるがままになっていたけれど、すぐにその手を邪険に払い除け私の方に視線を向けた。
 その顔ははっきりと怒っていて、私はびくりと肩を竦める。

「お前が足を止めなけりゃ、ばれずに済んだんだ!」

 その少し理不尽な気がする怒りに、いつもだったら何かしら言い返せていたかもしれない。
 でも今の私にはそれが出来なくて、朦朧とする頭でとにかく謝らなければと口を開く。

「ごめんなさ……」

 出したはずの自分の声が酷く遠く聞こえた。
 そして、急速に身体が自分のもので無くなっていく感覚。

(あ、やば――)

「カノン!?」

 そんなセリーンの大きな声とラグの驚いたような顔を最後に、私の意識は途切れた。