「なんなら、こいつの昔話でも語りながらお茶でもいかがですか?」
「おいこら、人の話を聞け! オレはお前なんか知らねぇって言ってんだよ! おい変態女、こんなヤツほっといて早く宿を取るんじゃねーのか!」
「てりゃ」

 そんな掛け声と共に、突然ラグの頭にチョップが入る。

「いってぇ!!」
「あ、何をする! 可哀想ではないか!」
「はは、大丈夫ですよこんくらい。な、ラグ。……お前なぁ、こんな美人の姉ちゃんに向かって変態女とはなんだ、変態女とは」

 そう軽く叱るように言って、アルディートさんはラグの目線に合わせるように腰を屈めた。

「ってかお前さっきからなんだその羨まし過ぎる状況。旅してる間にそんなおいしい術覚えたのか?」
「違うわ!」
「違うのか? なんだよ、教えてもらおうと思ったのに」
「あ~~っ、だから、オレはラグじゃねーって言ってんだろーが!!」

 ラグがそう声を張り上げた瞬間だった。それが合図だったかのように彼の身体が急成長し、元の大きさに戻ってしまった。

 間髪入れずに手を離すセリーン。
 目の前でその光景を見てしまったアルディートさんは一度その目を大きくしてから、

「よ、ラグ。久しぶりだな!」

嬉しそうな笑顔でラグの頭を乱暴に撫でた。