痩せているのも、こんなに肌の色が白いのも、病気のせいだったりするのかな。






『 病院に行きてぇんだろ?あの人も柊空も会いたがってるし、俺も今から行くとこだから。 』




身体に咲いた花を見ても、驚きも引きもしなかった。
それに彼は緋衣先生の患者で、柊空さんと親しくしている。


…彼のことは、信用しても大丈夫なんだ。
そう思うと不思議と気が楽になって、身体の中で疼く根が、少しずつ動きを止めていくような感覚がした。

彼は私の格好を見て『 薄着だな。 』と言いながら自身の上着を脱ぐ。そして私の目を見ると、すげえ水、なんて笑いながらマスクを取った。
その上着は私の身体を包み込んで、真っ黒なマスクは、頬に咲いた花を隠してくれた。




『 ほら、ついてこい。 』




私の代わりに薄着になってしまった彼は、寒そうに肩を上げて、ズボンのポケットに手を突っ込みながら歩き始めた。

上着に染み付いた煙草とコーヒーの香りは、暒くんや柊空さんとはまた違った感覚。




「 あの…ありがとうございます。 」

『 向こうは冬じゃなかったのか? 』

「 ……春、でした。 」

『 ふーん、そ。 』




…やっぱり彼は、私が過去から来たんだってことも知ってるんだ。


少し歩いて無人の車の中に乗り込むと、空間に映し出されたモニターを簡単に操作して、彼はそのまま目を閉じて眠ってしまった。
車の中が暖かくなると同時に自動的に動き出し、以前の緋衣先生の車のように空を飛び始める。

きっとこれは、私の住んでいる時代で言うタクシー。
運転手はおらず、目的地を設定すれば運転しなくても勝手に乗せていってくれるようなものだ。



…さっきまで、暒くんと一緒に居たんだけどな。

一瞬にして世界も季節も変わって、人だって皆あの時代には存在しない。