そう決めて言うと、彼は『 また今度、ゆっくりでいいよ。 』と、理解してくれた。

彼ならきっと信じてくれるし、彼ならきっと、この奇妙な病気のことも分かってくれるはず。
今すぐにでも聞きたいことが沢山あるだろうに、疑問も沢山あるだろうに。



私を思って、待ってくれているんだ。




「 …暒くん、本当にありがとう。 」




心配掛けてごめんね、と続けると、暒くんは私の髪を撫でながら『 バーカ、心配し過ぎて死ぬかと思ったよ。 』と、優しく笑った。


それからは暒くんの作った雑炊を食べて、服を借りて、警察の方に連絡をしてもらった。
少し大きなパーカーは彼の香りがして、彼自身も終始ずっと隣に居てくれて。だからか、警察の人と話す時もあまり緊張せずに済んだ。

質問されたことは、主に " どうして研究者達に連れていかれそうになったのか " と、 " 今までどこに居たのか " の二つ。
一つ目の質問に関しては「 私自身もよく分からない 」と答え、二つ目の質問に関しては「 森の奥で身を隠していた 」と濁しておいた。



次に " 両親から虐待を受けていたのか " を聞かれたけれど、私はそれに素直に答えることが出来なかった。

愛されていなかった、愛することが出来なかった。時にはしつけと称した暴力を振るってくることもあったけれど、虐待とまではいかない。
それに暒くんは私の親のことをよく知らないし、これ以上このことを思い出せば…せっかく枯れてきた根がまた伸びて、花が咲いてしまうから。

だから首を横に振って、手足の包帯は森で怪我をした時のものを暒くんに治療してもらった、と嘘をついて。もうこれ以上は話したくないと答えると、警察は案外簡単に話を終えてくれた。


そして最後、これからのことを聞かれると、暒くんは私の手をギュッと握って口を開く。